「住む」から「過ごす」へシフト

〜収納は、大切な時間をつくるサポーター〜
最近、「住む」という言葉に満足できなくなりました。
どこに住んでいるか、どんな家に住んでいるか。
それはもちろん大切なことですけど、
少し人が中心でもいいかなと思っています。


「どこで、どんなふうに過ごしているか」の方が、
その人の暮らしぶりをよく表しているような気がします。


「住む」って何?「過ごす」って何?

む=拠点

「住む」は物理的な拠点を表す言葉。
広さ、立地、間取り、設備…。
いわば“暮らしの外側”を指しているような印象です。

過ごす=体験

「過ごす」はもっと“内側”に目を向けた言葉。
どんな気持ちでそこにいて、どんな時間を過ごしているか。
誰と笑って、どんなふうにくつろげているか。


「過ごす」には、その人の価値観や大切にしているものが
にじんでいるように感じます。

「しまうこと」が目的になっていた頃

住宅設計をしていた頃

私自身、この仕事を始める前は収納の正解を
「うまくしまい込むこと」だと思っていました。


どうにか見えないように納めることで
“片付いた”と感じていたんです。
その頃私は、住宅の設計の仕事をしていました。
自分の住空間は絶対にかっこよくしたい!
そう思っていました。
だから、頑張って片づけていました。


と言っても、夫婦2人暮らしだったので、
頑張れていたのだと思います。


収納の仕事を始めた理由

その後、夫の仕事で海外へ赴任しました。
発展途上国への赴任でした。
全てが新鮮で、楽しい日々でした。


でも、買い物事情だけは最悪で、
野菜と鶏肉以外の食料品、衣料品、薬品など
ほとんどを外国から調達する必要がありました。


数か月分、モノによっては1年分のまとめ買い。
当然、ストックが大量になります。
家が広大だったのでスペースはあったけど、
いろいろなところに分散して収納していました。


欲しいモノは次の日に配達される
日本での生活からは考えられませんが、
「見つからないので買おう!」は無理なので
“失くす”“見つからない”“足りなくなる”は許されません。


その頃は収納について知識がなかったので、
頑張って頑張って、頻繁に在庫のチェックをしていました。
今思い出してみると、大きなクローゼットや収納家具はあったけど、
どれも超使い辛い最悪の収納でした。


4年間の生活の後、日本へ帰国。
狭い日本の社宅でしたが、なぜかすっごく快適でした。

海外生活では家事をやってくれる使用人がいまいした。
料理、洗濯、掃除、そして1歳の息子の相手もしてもらっていまいした。

でもでも、日本での生活は楽でした。
ほぼ全てのモノを後任や友人に買い取ってもらったり、譲ったりで最小限の持物で戻ってきたからです。

ちょっと長くなりましたが、
この経験が私の収納の原点です。


✅モノが少ないと楽
✅家が広ければいいというわけではない。
✅収納の仕組みは大切

収納は「使うため」の仕組み

モノが超少ない状態で帰国し、
衣更えも必要がなくなり、全てのモノが工夫しなくてもさっと取り出せる
そんな状態になりました。


この清々しさを他の人にも伝えたいと
日本で唯一の収納を専門の会社で働くことになりました。
私の収納の師匠の飯田久恵先生には、
本当にたくさんの事を教えていただきました。


収納とは私がかつてやっていた
“ものを隠す”ためではなく、
“使うためのサポート”
だと叩き込まれました。


この考え方は、今では収納の常識となっているかもしれませんが、
実は私の師匠の飯田久恵先生の考え方なのです。



“使うためのサポート”とは
ほんの一例ですが、
・子どもが自分で身支度できる配置にすれば、朝のバタバタも減る。
・掃除道具がすぐ手に取れれば、忙しい日も「今やっておこう」ができる。
収納って、実は“暮らしの滑らかさ”をつくる大事な土台な

システムを整えれば、時間が生まれる

収納のシステムを整えると、自由な時間が増える

さらに実感したのは、
収納のシステムを整えると、自由な時間が増えるということ。


毎日の「探す時間」「迷う時間」「出し入れのストレス」が減ると、
そのぶん心にも時間にも余裕ができて、
自然と“やりたいこと”に時間を使えるようになります。


好きな趣味に時間を使う、
ゆっくりお茶を淹れる、
子どもと穏やかに関わる、
睡眠に時間を使う
もちろん、もっと仕事を頑張ることも可能です──

そんな当たり前のようで、つい後回しにしがちな
“いい時間”をちゃんと持てるようになるのです。
収納は、ただモノを収める箱じゃない。
自分の大切な時間を守るための仕組みなんだと思います。


私が収納の仕事を始めたころは
75㎡くらいの社宅に住んでいました。
学んだことで実践できることは全てやりました。


モノが少なかったので、
探しモノをしたり、出し入れに手間がかかっているわけではなかったですが、
物入に棚板を増やす、
押入れを改良する、
クローゼットを一工夫するそれだけで、
頭のスッキリ度が格段に上がりました。


5年後に自宅を購入し、
収納面の可能性が格段に広がりました。


最初にちょっとした投資もしました。
その後も必要に応じてちょい足ししていき、
100%ではないけど、80~90%は完成させました。


実は、収納のシステム作りは、
きちんとお金をかける方が絶対にうまくいきます。
特に、収納苦手、まめでない、捨てるの苦手という方は!!


収納に限らず、食事、衣類もそうですけど。
工夫でなんとかするは
才能、センス、手間がかかります。



「住む」→「過ごす」

暮らしの主役を、時間と自分に戻す

収納も、片付けも、部屋づくりも──
全部「住むため」ではなく、「どう過ごしたいか」を叶えるための手段。

暮らしの中心に“過ごす時間”を置いて考えると、自然とモノの見直しが進んで、
収納もより「使いやすく」「続けやすく」「心地よく」なっていきます。

最後に、あなたの暮らしを振り返るチェックリスト

ちょっと立ち止まって、今の家のこと、今の暮らしのことを見つめてみませんか?
以下の項目に、いくつ「はい」があるでしょう?


住むから過ごすへ、8つの問いかけ

  1. よく使うものが、すぐに取り出せる場所にある
  2. 使っていないものが、収納スペースを占領していない
  3. 収納は「見た目」より「使いやすさ」を大事にしている
  4. 探しものに時間を取られず、日常に小さなストレスが少ない
  5. お気に入りのものが、ちゃんと日々の中で活躍している
  6. 家の中に「余白」や「くつろげるスペース」がある
  7. 家にいると「ほっとする」「気持ちが整う」瞬間がある
  8. 家事や片付けがラクになって、自由な時間が前より増えたと感じる

ひとつでも「できている」と思えるなら、それはすでにあなたが「住む」から「過ごす」へとシフトしはじめているサイン。
全部そろっていなくても大丈夫。暮らしは、少しずつ整えていけばいい。


家は、ものをしまう場所ではなく、
あなた自身と、大切な人が、心地よく過ごすための場所。
今日もそんな時間を、力強く支える仕組みを整えていきましょう。

About Mina Yoshida

収納カウンセラー・一級建築士YoshidaMina
20年間で個人住宅の収納カウンセリング、新築・リフォーム収納コンサルティングを延べ1,000人以上、延べ300人を対象に「収納セミナー」を行っている。整理収納で頭と空間のスッキリを叶え、家事の時間を2/3に短縮できる家をお客様といっしょに作り上げる。その中でも新築・リフォーム時の収納設計コンサルティングを得意する。大学で住居学を学び、卒業後ハウスメーカー、設計事務所で住宅・マンション設計に携る。その後、夫の海外赴任に帯同する。海外生活では友人宅を訪問する機会が多く様々な暮らしを見る経験をする。

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